除菌の方法と再発の可能性について
ピロリ菌は保持者全ての方に症状が現れるものではありません。しかし、発症すると特有の胃部不快感と胃痛に悩まされ、精神状態にも支障をきたしてしまいます。
近年までピロリ菌感染症状が顕著な十二指腸潰瘍などでは、対処療法的な投薬と長期的な食事療法が治療の手だとして一般的でした。そのため、頓服薬が効かなければ即効性のある皮下内注射による鎮痛薬を打つといった具合です。
何年か時が経つうちに症状が改善されて医療機関に足を運ばなくなっても、また再発することも珍しくありません。
症状が落ち着いてもピロリ菌が根絶したわけではないのです。そこで、今最も期待されているのが除菌という新しい治療スタイルです。
除菌について
除菌薬の治療が保険適用範囲内で認められるのは、十二指腸潰瘍と胃潰瘍の特定疾病のみが対象になります。しかし、検査で明らかにピロリ菌の存在がわかった方については、希望者のみ自費診療枠で除菌薬を処方してもらうことができます。
自費扱いになると凡そ2万円から3万円前後の治療費が必要になりますが、胃の痛みや不快感による精神的なダメージから離れたいと、高額でも除菌薬の投与を希望される方も増えているようです。中には将来的な胃がん予防のために除菌を試みられる方もいます。
除菌薬はどんなもの?
処方される除菌薬は3種の成分を配合したものになります。
内容としては、
ピロリ菌に特化しない多種類の細菌の活性発育を抑制する薬。
ピロリ菌に特化した抗菌作用を高めるための薬。
抗生物質の働きを高めるために胃酸の分泌を抑制する薬です。
医療機関や個人によって使われる薬が異なりますが、投与期間は1週間で朝晩の2回食後に服用します。除菌を目的として投薬されたのち、除菌効果判定によって完全に除菌されたかを確かめます。
約2割の方が完全除去に至らない統計がでていますが、このようなケースでは再度除菌治療を行ったり酸分泌抑制薬という処方箋を服用して、除菌を目指していきます。
除菌薬に使用される薬の種類
メトロニダゾール
パリエット
ランサップ
クラリスロマイシン
アモキシシリン
ラベプラゾールナトリウム
オメプラゾール
ランソプラゾール
エソメプラゾール
パセトシン
除菌後の再発は大丈夫?
除菌が成功しても、100%再発の心配がなくなるわけではありません。以下のような場合再発する可能性がありますので、知っておきましょう。
除菌が成功しても、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が完全治癒に至っていない。
胃壁や胃の粘膜組織が弱って胃酸分泌のバランスが崩れている。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発症原因がピロリ菌によるものではなかった。
除菌効果から菌の耐性ができてしまった。
再除菌のリスクが軽減できるかも!?オーダーメード除菌療法とは?
静岡にある浜松医大臨床研究管理室の疫学調査結果に、ピロリ菌除菌についての耐性獲得に関した報告があります。
報告によると、年々ピロリ菌が耐性を獲得して除菌の効果が低下しているというものです。
いくつかある除菌薬の中でもクラリスロマイシンは受診者の半数以上が除菌できない状態にまで、成果が期待できないことがわかりました。この理由には耐性を獲得しただけではなく、阻害薬を代謝する酵素の遺伝子が異なる点にも触れています。
代謝速度が遅い人ほど除菌成功率が高まっていて、このギャップを生じさせないために菌の耐性と代謝速度を考慮して、オーダーメイドの除菌法を確立するのが妥当であるとの結論に達しています。
今後は除菌の前に採血して阻害薬の代謝速度を調べたうえで、個人によって異なる薬の耐性を調べて、投薬期間や投薬回数を変えていく試みが広がっていきそうな気配です。
このような取り組みが勧められれば、個人によって調整されているので副作用や注意点の懸念も減少し、再除菌の心配もない状況が期待できます。
実際に臨床試験においても、クラリスロマイシンで効果がなかった12人に対してオーダーメイド除菌を試みたところ、全員が除菌に成功する結果がでています。
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